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日本文明の謎を解く―21世紀を考えるヒント

日本文明の謎を解く―21世紀を考えるヒント
竹村 公太郎 著 清流出版 定価1890円(税込)
著者は土木工学の専門家で、旧建設省で長らくダム・河川行政にたずさわって、一昨年(2002年)退官している。在職中も積極的にマスコミや市民団体と対話や論争に従事した異色の論客である。本書はそうした公共事業としての仕事を通じて、人類文明への登山に当たって社会インフラという登攀ルートを(形而上ではなく自分の足で)とった文明論だという。
著者の地理・気象から読み解くという特異な視点には、和辻哲郎の『風土』の系譜が見て取れる。たとえば、レバノンと日本の一夏三か月の気温分布を見ると、23〜27℃というレバノンに対して、日本は実に17〜32℃という大きな温度変化を示す。レバノンでの一夏の温度変化の4℃などは、日本においては昨日と今日との温度変化の幅に及ばないほどだ。この温度変化大きさから、日本人のせかせかした性格を読み取 ることが出来るという。
2〜3紹介すると、秀吉によって江戸に転封された徳川家康が、自然との戦いに取り組み、この広大な湿地と利根川・荒川という暴れ川を征服し、水路を整備し干拓を行って日本一の肥沃な平野へと作り直した功績を挙げ、いま環境の面からダムや堰に対するマスコミや市民団体にやんわりと苦言を呈している。
またモナリザの後ろに隠れる背景の川はどのように流れているかという謎に挑戦、そこには循環する川がありそのことがモナリザの絵の永遠性につながるのだという。こうした鋭い視線は本書の至るところで見いだせる。
「日本人の寿命」というところでは、大正10年から急に平均寿命が伸び始めたナゾにいどみ、それは水道水の塩素滅菌が始まったからだという事実に行き着く。そして水道インフラとしてはすでに20年経過しているのに、細菌学の知識がなかったため水道は寿命に影響しなかったのである。「事実は小説より奇なり」その塩素滅菌だが、ロシア革命にあたってのシベリア出兵の際、製造した毒ガス用液体塩素の再利用として採用されたものだということを知る。
特に行政での経験上、日本人の隠蔽体質は結果として不信と懐疑心を生むばかりであって、諌早湾や長良川の河川堰では、いくら説明してもマスコミは行政側にとってマイナスのイメージばかりを強調したのだが、著書が徹底したディスクロージャー(情報公開)によって、マスコミの対応は次第に公平な報道に変わっていくという、今後の有益な指針になる指摘もある。(まことに纏まらない書評で恐縮だが)目からウロコの一冊である。

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